iPhoneでマニュアル撮影がしたい
きっかけはiPhoneのカメラでマニュアル撮影をしてみたいと思ったことでした。
そこで、カメラアプリをいろいろと物色して出てきたのがモバイル版 Lightroom CCです。マニュアル撮影が可能で、しかもRAWの保存もできるとのこと。
早速使用してみたところ、非常に便利だったのでその内容についてレビューしたいと思います。
まずは結果から。
こちらのエントリーと同じ写真を、モバイル版LightroomCCを使用して同じようにやってみました。
変更前
変更後
私が普段使っているパッケージ版Lightroom6では使えないかすみ除去の機能を使用した分、仕上がりの雰囲気が少々異なっています(楽しくてついつい使い過ぎてしまいました)。
しかしながら、デスクトップ版でとほぼ同じようなレベルまでレタッチが出来きたように思います。
フルサイズのRAWファイルにも関わらず(サクサクとまではいきませんが)、十分実用的な操作感、スピードで、デスクトップ版と変わらないレベルのレタッチ作業を行うことができたのは本当に驚きでした。
ちなみに、私はRAW現像にMac版のLightroomを毎日のように使用していますが、CCではなく買い切りのLightroom6を利用しています。
よって、デスクトップ版 Lightroom CCとのデータ(クラウド)連携などについては、レビュー対象外となっています。あくまでも、無料のアプリとしてのカメラ機能、現像(レタッチ)機能について検証、言及した記事となりますのでご了承ください。
モバイル版「Lightroom CC」とは
iOs版、Androido版どちらもありますが、当エントリーではiOs版をiPhoneSEで使用しています。
インストールから起動まで(iOSの場合)
ダウンロード
AppStoreを起動して、アプリを検索します。キーワードに”lightroom cc“と入力すると、(広告を除く)1件目に表示されると思います。
起動
サインイン
アプリ自体は無料なのですがログインが必要となります。私はAdobeのアカウントでログインしました。
ちなみに、Adobeのアカウントは無料のアカウントで問題ありません。「Adobe CC」等の有料プラン(サブスクリプション)なしでも大丈夫です。。
なお、制限がかかる(使用できない)のは、クラウド機能、デスクトップ版との連携、現像の一部機能等であり、カメラ機能、及び現像機能のほとんどは無料で使用可能となっています。
ギャラリー
最初にギャラリーの画面が表示されます。最初は画像が何もない状態となっています。
Lightroom CCの使い方は大まかに次のような流れとなります。
画像の追加
カメラロールから画像を取り込む
左側の「画像追加」アイコンをタップして、カメラロールから画像を選択して取り込みます。
RAWファイルの場合は「DNG」、すでにLightroom CCに取り込まれている場合は「Lr」というラベルが表示されます。
スワイプすることで複数の画像を同時に選択して取り込みことも可能です。
右上のメニューアイコンをタップすると、表示するファイルのタイプ(写真/ビデオ/RAW)を絞り込むことができます。
一枚を選択して取り込んだ場合は、プレビューが表示されている状態で、右上のチェックアイコンをタップすることで、ギャラリーの登録が完了します。
ギャラリーに選択した画像が追加(表示)されていればOKです。
カメラを起動して写真を撮影する
右側のカメラアイコンをクリックすると、カメラが起動します。Lightroom CC上のカメラを使用して撮影を行うと、その画像がギャラリーに追加されます。
ギャラリーに登録されるまでは多少の時間がかかるようです。特に連続で撮影した場合などは、枚数に比例して時間がかかります。
撮影してみる(RAWファイル撮影)
Lightroom CCならではの機能は次の2点
以降、これらの機能について説明します。
起動
最初に起動した状態はこのようになっています。
基本的には標準のアプリと同じような感覚で使用することができます。シャッターを切る際は、ディスプレイ上のシャッターボタン、もしく音量調節用の+/-ボタンを使用します。
露光量補正は、左右スワイプで調整可能です。標準カメラの上下とは逆ですね。また、マニュアル撮影時においても、シャッタースピードかISOのどちらかがAUTOの場合は、露光量補正が変更可能ですが、どちらとも固定(指定)した場合は露光量補正は変更不可となります。当たり前といえば当たり前ですね。
基本設定
右上のメニューボタンから、基本的な設定を行うことが出来ます。
左から順に「アスペクト比」「タイマー」「グリッドとレベル」「ハイライトのクリッピング表示」「設定(画面の明るさ、ジオタグの有無、HDR撮影時の元画像保存有無)」を設定します。
マニュアル撮影
シャッターボタンの左にあるメニューで、撮影モードを切り替えることができます。
マニュアル撮影を行いたい場合は、プロフェッショナルを選択します。
設定
プロフェッショナルモードにすると、次の項目を設定できるようになります。
それぞれの設定の変更はスライダーを動かして行います。初期値に戻したい場合は、スライダーの丸の部分をダブルタップします。
Exp(露光量補正)
露出補正です。シャッタースピードもしくはISOのどちらかがAUTOの場合に指定可能。設定値は-3.0~+3.0。
Sec(シャッタースピード)
1/10,000~1/4で指定。
ISO(感度)
25~1600で指定。感度の上限が思ったより低くて意外でした。
WB(ホワイトバランス)
予め用意されている中(タングステン/蛍光灯/昼光/曇天)から選択するか、ニュートラルグレーでの設定が可能です。RAWで撮るのであれば、とりあえずAUTOで問題ないでしょう。ちなみに色温度の指定はできないようです。
フォーカス
0~100%で指定します(0は最短撮影距離、100%は無限遠かと思われます)。
なお、フォーカスピーキングの機能もあることに驚きましたが、マニュアルフォーカスをする用途は私にはイマイチ思いつきません。手前にピントを合わせてあえてボケボケの写真を撮ったりするとか・・?
RAWファイル保存
上部のボタンをタップしてファイル形式を変更することが出来ます。
DNGを選択することで撮影した画像をRAWファイルとして保存することが出来ます。
RAWファイルのエクスポート
撮影したRAWファイルは、アプリ内のギャラリーに表示されますが、外部(PC等)へ連携するには、一旦カメラロール等に保存する必要があります。
エクスポート手順
- 上部の「共有」ボタンをタップ
- 「元画像を書き出し」を選択
- 保存先で「カメラロール」を選択
このようにすると、RAWファイルがカメラロールに保存されます。拡張子はDNGで、ファイルサイズは約16MBとなっていました(iPhoneSE 1200万画素の場合)。
使用感
やってみたかったマニュアル撮影でしたが、結局のところAUTOで十分という結果になりました。
あえてマニュアルで撮る必要性というのが思いつかなかった為です。パッと思いつくのは、風景などを三脚使用で撮る場合などに、低感度を保ったままシャッタースピードを遅くできるといったケースでしょうか。
それよりも、個人的にはRAWで保存できるという部分が一番大きいかなと感じました。
現像(レタッチ)してみる
こちらは、どうせPCでやるからと、あまり興味もなく期待もしていなかったのですが、良い意味で予想を裏切られました。
まず、デスクトップ版でできることがほとんどできる(ように思われます)。少なくとも私が普段使用している機能はほぼ使える上に、(私が普段使っている)CS版にはない「かすみ除去」の機能も使用することが出来るという嬉しいポイントもあったり。
使用できない機能としては、有料版(プレミアム機能)として切り分けられている機能です。
プレミアム機能
- 部分補正
- 修復
- ジオメトリ
部分補正に相当する部分はたまに使うことはありますが、無くても問題はありません。むしろこれ以外の機能が全て使えるということは、写真編集(レタッチ)に必要な機能としては十分過ぎるくらいだと思います。
使用感
動作はややもっさりした感じはあります。パラメータを変更した際など、プレビュー表示までに少々時間がかかります。といっても、デスクトップ版でフルサイズのRAWファイルを編集してるよりは全然マシなレベルです。
私はiPhoneSEを使用している為、7,8,Xなどの性能の高い機種であればサクサク動くのかもしれません。
高画素のRAWファイルの場合
高画素のRAWファイルについてはさらに重たくなるのかと思い、実際に試してみました。
試したのはK-1(3640万画素)で撮ったRAWファイルで、サイズは約45MB(※参考:iPhone 1200万画素 約16MB)。
その結果はというと、なんと体感的な処理速度についてはiPhoneで撮影したものとそれほど変わらない結果となりました。
デスクトップ版では、フルサイズで撮ったRAWファイルは現像時の処理が重たくて悩みの種となっているのですが、これはいったいどういうことなのでしょう・・・?不思議です。
良く使うメニューや操作方法
一通り触ってみて、おおよそデスクトップ版の機能を網羅していることはわかりましたが、当然ですがUIはかなり異っていました。
メニューは次のようになっていて、青い星印の機能が有料機能です。
以降、分かりにくいメニューの位置や操作方法など、デスクトップ版と異なる部分を中心に紹介していきます。
操作
補正前のプレビュー表示
画像のどこでもいいので、長押しすると補正前の画像が表示されます。
パラメータの変更(初期値への戻し方、ステップアップ・ダウン)
設定中のパラメータを、初期値に戻したい場合は、スライダーの丸の部分をダブルタップ(2回素早くタップ)すると、初期値に戻ります。
また、スライダーの丸の部分の左右をタップすると、少しずつ上げたり下げたりすることが出来ます。
なお、デスクトップ版のように数値を直接入力しての指定はできないようです。
情報の表示/非表示
メニューからも切り替えられますが、2本指タップが便利です。
2本指タップをする度に、情報が表示されます。一番使用頻度が高いのはヒストグラム表示でしょうか。
編集画面
非表示→画像情報表示→ヒストグラム表示
ギャラリー
ギャラリーのサムネイル表示時に、2本指タップを繰り返すことで、次の情報を表示することが出来ます。
非表示→ファイル形式を表示→フラグと評価を表示→写真情報を表示→EXIF情報を表示
なお、ギャラリー表示のサムネイル画像はピンチイン、ピンチアウトで画像のサイズを変更することができます。
編集の取り消し(ひとつ前に戻る)
上部の矢印アイコンをタップすると、ひとつ前の状態に戻すことが出来ます。
また、アイコンを長押しすると向きの異なる矢印が2つ表示されます。、それぞれが「元に戻す」「やり直す(取り消しの取り消し)」に相当する
メニュー
以下、2段階で展開するなど、見つけにくいと感じた機能(メニュー)となります。その他の機能(メニュー)については、それほど戸惑うことはないかと思います。
色相・彩度・輝度の変更
「カラー」メニューの右上「混合」をタップすると、変更用のパネルが表示されます。
明暗別色補正
「効果」メニューの右上「明暗別」をタップすると、変更用のパネルが表示されます。こちらは、デスクトップ版とUIが少々異なり、左右で色相を変更し、上下で彩度を調整します。
書き出し
一通りレタッチした後は、JPEGファイルを書き出します。
- 上部の「共有」ボタンをタップ
- 「カメラロールに保存」を選択
- 画像サイズを選択(「小-2048px」を選択すると長辺が2048pxのファイルが作成されます)
デスクトップ版との違い
フリンジの軽減の機能がデスクトップ版に比べて弱いのかなと感じました。開放で撮ることが多いので、フリンジは盛大に出てしまうこともあり、こういった場合はスポイトツールを使ったフリンジ除去が非常に有効なのですが、この機能はないみたいです。
その他の機能
まとめ
最初は、マニュアル撮影、RAWファイルといったカメラ機能が目的だったのですが、レタッチ機能の方が使うことが多くなりそうな気がします。
旅先など、PCがない場合でもRAW現像ができるというのは非常に便利です。もちろんしっかりと追い込みたい場合はデスクトップ版がベストですが、デスクトップ版でやっていることを10とすると、モバイル版でも8~9くらいのことはできるように思います。
全ての機能は多くて書ききれませんでしたが、Lightroomお馴染みの機能である、「プリセット」や、設定を丸ごと別ファイルにコピーしたりすることもできます。
省かれている機能を探すのが難しいくらい多くのことが出来てしまうという「モバイル版 LightroomCC」は本当に素晴らしいアプリだと思います。
Lightroom使いの方も、そうでない方も是非お試しください。
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